エンジニアリングの世界では日々新しい技術や手法が生まれています。私たちが普段扱っているSalesforce開発やAI連携、Webスクラッチ開発の現場でも、常にモダンなアプローチをキャッチアップし、プロジェクトに還元していくことが求められます。
今回は、月に1回開催している社内勉強会(5月度)から、日々の業務や開発のヒントになりそうな3つのトピックをピックアップして共有します。皆さんの課題解決の参考になれば幸いです。
1. 業務資料の壁を越える「Multimodal RAG」のローカル構築検証
LLMと社内ドキュメントを連携させるRAG(検索拡張生成)はすっかり定着しましたが、実際の業務資料はテキストだけでなく、画像、表、複雑なレイアウトのPDFなどで構成されていることが多く、従来のテキスト抽出だけでは情報が欠落してしまう課題があります。
そこで今回は、PDFを「テキスト+画像+表」に分解してマルチモーダルに解析できるOSSフレームワーク「RAG Anything」を用いた検証結果が共有されました。
- 完全ローカルでの動作: 機密性の高い社内資料を扱うことを想定し、外部APIを使わず「llama.cpp」を用いてローカル環境で完結させています。
- モデルの構成: EmbeddingやRerankerにはQwen3を、視覚言語モデル(VL)にはQwen3.5を採用しています。
- 検証の成果: グラフや表の構造を保持したまま処理できるため、「グラフの傾向」といった視覚的な質問にも回答できる優位性が確認できました。
UIや運用基盤には追加開発が必要ですが、障害解析の補助や図入りの設計書検索など、実務への応用が大きく期待できる分野です。
2. カンバン方式の限界?「Linear」で個人のタスク管理を仕組み化する
プロジェクト管理だけでなく、個人のTODO管理に悩むエンジニアは多いはずです。今回は、長年Trelloを愛用していたメンバーが、開発チーム向けツール「Linear」へ個人タスク管理を移行した事例です。
- 「いつやるか」を決める仕組み: Trelloのようなカンバン方式は直感的ですが、「いつやるか」の管理が難しいという弱点がありました。Linearの「Cycle(1週間の枠)」機能を使うと、終わらなかったタスクが自動で翌週に繰り越されるため、今週やる分だけを自然に意識できるようになります。
- 「とりあえず箱」でタスクの埋没を防ぐ: やるか分からないタスクは「Triage(仕分け前の一時箱)」に放り込むことで、本来集中すべきタスクリストが汚れるのを防ぐことができます。
- AIとの連携: さらにAIアシスタント(Claude)とLinearを連携させ、「今日の予定を教えて」「○○を追加して」と対話形式でタスク管理を行うモダンなアプローチも紹介されました。
3. ミッションクリティカルな現場の「品質・テスト戦略」再定義
バグが医療現場の業務停止や誤診リスクに直結するような「医療システムの刷新」プロジェクトにおける、工学的な品質担保のアプローチです。
- 意識から「仕組み」への転換: 「丁寧に実装・テストする」という個人の意識には物理的な限界があるため、設計段階からテストを組み込む「シフトレフト」を実践し、手戻りを最小化することが重要です。
- PlaywrightによるE2Eテストの安定化: モダンなテストフレームワークである「Playwright」を採用することで、描画の自動待機(Auto-waiting)やマルチブラウザ並列実行を活用し、自動テスト特有の「不安定さ(突然死)」を克服しています。
- AIによるテスト構築の省力化: 生成AIとPlaywright(コードベース)の親和性を活かし、テストスクリプト構築の負荷を下げることで、エンジニアが本来の「テスト設計」に注力できる環境を作っています。
今回の勉強会では、最新のAI技術のローカル検証から、個人の生産性を高めるツール活用、そして堅牢なシステム開発を支えるテスト自動化まで、幅広い知見が共有されました。
技術は知っているだけでなく、実際に手を動かして検証し、現場の「仕組み」に落とし込んでこそ価値を発揮します。今後も、現場から得られた技術的な学びやトライ&エラーの過程を発信していきたいと思います。