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2025年02月07日

【1月社員ブログ】2025年問題 ―未だ残される課題―

入社1年目のS.K.です。今年もよろしくお願いします。
いよいよ2025年が来たということで、IT業界で勤める者として触れずにはいられない、「あの問題」についての話をしようと思います。

本記事の概要

2025年問題とは、国民の5人に1人が後期高齢者となることで、日本経済や社会の広い領域に深刻な影響を及ぼす諸問題のことです。
これについて、ご存じの方も多いと思います。しかし、IPAが定期的に公開しているDXに関する各種資料はチェックしているでしょうか?
今回はIPAによる「DX動向2024」の内容をベースに、どのような進展があったか、依然として残っている課題は何かを見ていきたいと思います。


なお、DX動向2024における調査では、大企業(租税特別措置法における)と中小企業の比率がおよそ1:3となっている点に注意してください。日本全体としての実態は、より中小企業側の傾向が強まる可能性があります。


参考記事:「DX動向2024」進む取組、求められる成果と変革

2024年時点での現状

DXの進展状況

「DX動向2024」では主に下記の2点で、進展があることが確認できます。


  1. DXの取組率の向上:55.8%(2021年)→ 73.7%(2024年)
  2. DXの成果がでている企業:49.5%(2021年)→ 64.3%(2024年)

2021年時点と比較して、DXに取組む企業が増加傾向であるのは、確かなようです。


DXの具体的な取組別項目の調査(実施年:2022, 2023)に注目すると、既存のデータおよびデータ処理のデジタル化にあたる「デジタイゼーション」と「デジタライゼーション」では成果が出ていると回答した企業が多いことが分かります。
一方で、新規製品・サービスの創出などの「デジタルトランスフォーメーション」と呼ばれる段階で、成果が出ていると回答した企業は少なく、この段階のハードルは依然として高いことが伺えます。


DX の具体的な取組項目別の成果(経年変化および米国との比較)

出展:IPA(2024)DX動向2024 図 1-13


企業内にある情報や既存の業務プロセスをそのままデジタル化するのには、技術を専門とする部署が運用・保守を行えば問題ありません。
しかし、新規の製品・事業や業務プロセスの改変には、営業や経理など、これまで技術にあまり触れてこなかった社員も技術に一定の知識と理解がなければならないので、なかなか難しいところだと感じます。

AIの利活用状況

日本企業のAIの導入状況については、2023年度と2022年度で大きく変わっていません。しかし、「導入している」と「現在実証実験を行っている」の回答の割合 の合計は2021年度から年々増加しており、AIの導入に向けた取組も緩やかに増加傾向にあるようです。


AI の導入状況(経年変化および米国との比較)

出展:IPA(2024)DX動向2024 図 2-5


しかしながら、会社の従業員数に対する生成AIの導入状況を聞いたアンケートでは、人数の少ない企業ほど消極的であることが分かります。企業の数では中小企業の方が圧倒的に多いので、日本全体のAIの導入率については、ここがネックになってしまっています。


生成AI の導入状況(従業員規模別)

出展:IPA(2024)DX動向2024 図 2-9

システム内製化の状況

システム内製化は、「内製化を進めている」もしくは「必要な部分のみ内製化済み」の企業が約41.7%を占めています。
会社の従業数ごとに注目してみると、AIと同様に人数の少ない企業ほど消極的です。
システム内製化はDX化におけるもっとも理想的な選択肢ではありますが、相応の人員とコストを割かなくてはならないので、大企業以外では取組率に大きな差が出ています。


システム開発の内製化(従業員規模別)

出展:IPA(2024)DX動向2024 図 2-13


そもそもシステム内製化が、日本の雇用システムに合っていないという指摘もあります。
興味深い記事を見つけたので、参考にしていただければ幸いです。


参考記事:業務システム担当者は内製・SI・SaaSのどれを選択するべきなのか – 「ソフトウェアの入れやすさの4象限」を作る –

服を買いに行く服がない

DX動向2024の中では、大企業とそれ以外で、DXの取組に大きな差があることが分かります。
大きな問題は、DXを推進する人材が不足していることです。
さらに問題なのは、DXを推進する人材が「大幅に不足している」と答えている企業が、年々増加していることです。


DX化は、日本において人口減少の対策として進められていますが、その対策する人々が全く足りていません。
DXを行うことそのものへの効率化や、DXを行える人材を育成することも今後の課題だと感じます。


DX を推進する人材の「量」の確保(経年変化および米国との比較)

出展:IPA(2024)DX動向2024 図 3-1

総括

全体として、DXの取組は進んでこそいるものの、「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」、既存のシステムの置換といった物が中心であり、AIの導入やシステム内製化の本格化と言える段階ではないようです。


調べてみて勉強になった点としては、単純な業務や社内の仕組みのデジタル化で始終するDX化は、さほど効果が高くないということです。


DX動向2024の「デジタルトランスフォーメーション」の項目にも記述されていますが、「新規製品・サービスの創出」・「顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革」・「企業文化や組織マインドの根本的な変革」という項目の達成には、既存の業務フローの見直しなども必要になってきます。


DXの取組の是非に関わらず、上記の点は、今後人手不足の状況が悪化していくと思われる産業において、業務における様々な問題の根本的な解決策として、極めて重要なのではないでしょうか。

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